弁護士コラム

名前を知らない業者から取立ての手紙が届いたときは(振り込め詐欺、架空請求、債権譲渡、保証など)

1 名前を知らない業者からの突然の取立ての手紙
弁護士会のクレサラ相談に業者から送付されてきたという取立ての手紙を持参して相談にいらしたAさん。ご相談内容は、「引越をした先の自宅に、突然、Y社から借金取立ての手紙が届きました。私は、以前に消費者金融会社のX社から借金をしたことがあり、そのときの借金は返済せずに長期間そのままになってしまっています。ただ、Y社という会社名は、まったく聞いたこともありません。私はどのように対応すればよいでしょう」というものでした。

 

2 なぜ、名前を聞いたこともない会社から借金取立ての手紙が来たのか?
 その理由として考えられるケースの代表例をご説明します。
①Aさんが以前に借金をした会社の会社名が変更している可能性
 貸金業者の会社名が変更されることは、比較的良くあることです。単に会社名だけが変更された場合のほか、会社の合併などにより会社名が変更されることもあります。
 会社名が変更された場合、通常は、その貸金業者から、その連絡が来ます。
②振り込め詐欺、架空請求の可能性
 名前を知らない会社などから突然に取立ての手紙が届いた場合、振り込め詐欺や、架空請求の可能性も疑ってみる必要があります。Aさんが、いままで誰からも借金をしたことがなく、また、知人、親族、勤務先などから頼まれて保証人になったこともないような場合には、取立てにまったく理由がない、いわゆる振り込め詐欺や、架空請求の可能性があるといえます。
③Aさんの借金の相手(債権者)がX社からY社に交代している可能性
 次に検討する必要があるのは、以前にAさんが借金をした会社(債権者)が、X社から、Y社に、債権者が交代している可能性です。
 Aさんは、以前に消費者金融のX社から借金をして、これを返済せずにそのままになってしまっているということですから、X社からY社に、この債権者の交代があった可能性があります。この債権者の交代は、「債権譲渡」(例えば、X社は、Aさんへの債権について、取立が困難と判断して、額面額よりも低額でY社に債権を売却した)や、「第三者弁済による代位」(例えば、AさんがX社から借金をする際に、契約上、Y社がAさんの保証人となっていて、Y社がAさんの代わりにAさんの借金を返済し、Y社がAさんへの債権者の立場になった)ことなどにより起こります。
 このような債権者の交代の場合、取立ての手紙に、例えば、X社からY社に対してAさんに対する債権の債権譲渡が行われたと記載されていることが多いといえます。
④Aさんが誰かの借金の保証人になっていた可能性
 知人などがY社から借金をする際、Aさんが知人等から頼まれて、保証人になっている可能性もあります。借金をする本人が誰かに保証人になることを頼む場合、「決して迷惑は掛けない」とか「名前を借りるだけ」などと言って頼むことがあるため、保証人になった人が、その責任の重さを意識しなかったり、ときには、誰かの保証人になったことさえ忘れてしまうこともあるようです。

 

3 見知らぬ会社からの取立ての手紙に対し、どのように対応をするべきか
(1)対応を決めるためには理由の特定が必要です
 Aさんのように名前を知らない会社から取立ての手紙が届いた場合、その対応を決めるためには、まず、上記の代表例を含む、どのような可能性が考えられるのか、理由の特定が必要です。
 Aさんは、「以前に消費者金融会社のX社から借金をしたことがあり、そのときの借金は返済せずに長期間そのままになってしまっている」ということですから、③の債権者がX社からY社に交代している可能性が考えられます。
 ただし、上記の①~④のケースは、いくつか同時にあてはまることもあります。また、①~④以外の事情がある場合もあります。そして、最終的に理由を特定するには、Aさんに届いた借金取立ての手紙の内容、Aさんご本人の記憶の確認のほか、最終的にはX社やY社への問い合わせを含めた調査などにより、事実関係の確認を行うことが必要となります。

(2)事実関係の確認を行うにあたって注意するべきこと 
 例えば、振り込め詐欺の場合(②のケース)、Aさんが不注意にY社に電話を掛けるなどして接触をすると、振り込め詐欺被害に巻き込まれていく可能性があり、慎重な対応が必要です。
 そのほか、以前にAさんが借金をしたX社からY社に債権譲渡が行われ、債権者が交代しているような場合(③のケース)では、事実関係の確認方法や対応を誤ると、次のような大きな不利益が発生する可能性があります。

【考えられるその他の不利益・その1】
 不必要な返済をしなければならなくなるおそれ(消滅時効を主張できなくなるおそれ)

 債権譲渡の対象となる債権は、一般の方には信じられないことかもしれませんが、長期間弁済が行われていないことにより消滅時効期間が完成している債権(消滅時効債権)であることが、良くあります。
 Aさんの場合も、不用意にY社に連絡をとると、Aさんの対応次第では、せっかく消滅時効期間が経過しているのに、その消滅時効の主張(「時効の援用」といいます)をすることができなくなるおそれがあります(むしろ、Y社としては、そうなるように仕向けることになります)。具体的には、債務の存在を承認する行動(債務の存在を認める発言、弁済の猶予を求める発言、債務の一部でも弁済してしまう、など)です。

【考えられるその他の不利益・その2】
 過払金請求の機会を失い、また、不必要な弁済も継続してしまうおそれ

 これも、一般の方には信じられないことかもしれませんが、債権譲渡の対象となる債権は、借金の残額があるどころか、むしろ過払金が発生している債権(過払発生債権)であることもあるのです。
 仮にX社からY社に対して譲渡された債権が過払発生債権であった場合、Aさんは、Y社に対する弁済をする必要がありません。それだけではなく、X社ないしはY社に過払金の請求をすることが可能です。
 しかし、Y社からは、当然、このような説明はありませんから、これに気付かないまま、Y社に対して意味のない弁済を継続してしまうことになる可能性があります。

(3)平成24年2月6日最高裁第三小法廷判決
 貸金業者が、上記の①の消滅時効債権や、②の過払金発生債権の債権譲渡を受けて、取立てをするなどということは信じられない、との疑問をお持ちになる方もいらっしゃると思います。しかし、低額でこのような債権の譲渡を受けて、その回収により利益を上げようとする貸金業者もいるため、決して珍しいことではないのです。
 ご参考に、法務大臣の許可を受けないで、消費者金融会社から不良債権(上記のような、消滅時効債権、過払発生債権など)を譲り受けてその管理回収業を営んだ貸金業者について、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)33条1号、3条の罪が成立するとされた事例がありますので、ご紹介します(平成24年2月6日最高裁第三小法廷判決)。
 

 4 弁護士へご相談を 
このように、名前を知らない会社から借金取立ての手紙が届いた場合、その理由も様々であり、その対応を決めるためには事実関係の確認必要です。
この事実関係の確認にあたって方法を誤ると、振り込め詐欺の被害に遭ったり、不必要な弁済をしなければならなくなったり、過払金請求をできる機会を失ったりといった不利益が生じるおそれがあります。
そこで、このような借金取立ての手紙を受け取った場合、不必要な不利益を被らないためにも、弁護士会の法律相談センターでご相談されることをお勧めします。


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