弁護士コラム
武富士の会社更生手続について
1 武富士の会社更生手続について、平成23年7月15日、管財人の更生計画案が提出されました。「第1回弁済」として「更生債権の3.3%に相当する金額」を支払うものとされています。
さらに、「すべての更生債権等の額が確定するとともに、更生会社が保有する全資産の換価・回収が完了し、その時点での現預金から共益債権等を控除したうえで弁済原資を確保できた場合には、第2回弁済を実施」するものとされていますが、この「第2回弁済」については、実施されるかどうかも、実施する場合の時期も金額も不明のままとなっています。
2 この更生計画案が可決されると、武富士に対する過払金は、そのほとんどが返ってこないことになりそうです。
今回の会社更生手続で、武富士に対する過払金として届け出られた金額は、約1兆4000億円ともいわれています。これは法律上の原因のない不当利得であり、本来なら返還しなければならない性質のものであったはずです。
一体、約1兆4000億円(届出未了の潜在的過払金債権を含めると、本来なら、もっと多額になるはず)の不当利得金は、どこに消えてしまったのでしょうか。
3 この点、例えば、会社更生手続の直前まで、武富士が行っていた株主に対する高額配当の適否について、疑問があると指摘する意見があります。
武富士は、平成17年3月期の有価証券報告書で、過払金問題について、「不当利得の返還金額の推移は、急激に増加してきており、このままの推移が今後も続くようであれば、当社グループの業績に対して重要な損害を与える可能性も否定できない状況であります。」と記載しています。実際、その後、武富士の経営は徐々に悪化し、次第に資金調達が難しくなる等の状況がありました。
ところが、武富士は、株主配当につき、平成17年12月に実施した平成18年3月期中間配当で、それまでの年間100円であった配当額を年間230円に増額し、それ以降、同業大手消費者金融会社と比較して突出した金額の株主配当を続けてきました。その結果、大株主である武富士の創業者一族および関連企業には、株主配当名目で、多額の資金が流出しています。
上記増配の理由や上記配当額とした具体的根拠、計算方法等については、明確にされていません。
4 今回の会社更生手続により、武富士が、会社分割によってスポンサーであるA&P社(韓国企業)のグループ会社に消費者金融事業を承継させることの対価として支払われる金額(いわゆる「武富士の値段」)は、310億円以下といわれています。
5 他方、武富士の創業者から株式の生前贈与を受けた長男(武富士元専務)が、贈与税など約1330億円の課税処分取り消しを求めた訴訟において、最高裁は課税処分を取り消す判決を言い渡しました。そのため、国は約400億円の「還付加算金」(利息に相当するもの)を含め、計約2000億円を元専務側に返還することになっています。
6 平成23年6月30日、武富士から過払金の返還を受けられないでいる全国の過払金被害者(債権者)782人が、武富士の創業者一族に対し、17億6000万円の損害賠償を求める訴訟を提起しました。今後も、続々と、追加提訴が予定されているとのことです。
武富士の経営について、武富士の創業者らには、取締役としての義務違反はなかったのか。武富士が全国の顧客らから法律上の原因のない不当利得を続けた上、返還すべきその不当利得を内部留保しないまま流出し、返還不能にさせたことについて、武富士の創業者ら個人には責任はないのか。裁判の行方が注目されます。
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