事例7

事例7

個人再生手続きの失敗
Aさん

個人再生手続に関する法律が出来て数年が経ちました。この法律で多くの借金を抱えた個人が破産を避けて、元本を大幅に減額して返済をしていく道が出来ました。
この法律ができるまでは、借金を抱えた個人は破産か任意整理かおもに二つの道しかありませんでした。全く返済しないか(破産)、または元本を減額しないでその全額と法定金利を返済するか(任意整理)の両極端の方法でした。その中間の元本を減額して返済するという制度がなかったのです。
ですからこの法律ができて元本を減額して返済して立ち直っていく制度が出来たのは朗報でした。そのため多くの人が借金の重みから自由になり、生活の立て直しをしてきたのは間違いありません。
しかし、残念ながらここへきてせっかく再生手続によって返済をしてきたもののまた返済が出来なくなる事例が出てきました。いわば再生手続の失敗です。
その原因はなんでしょうか。いくつかの事例を見ていますとその原因が浮き彫りになってきます。

弁護士の対応

第1に、勤務先を解雇され、また退職したこと等による収入減が挙げられます。
予定した支払い計画(毎月最低約3万円強の金額)を払えなくなる原因で目立つのは、やはり失業、転職等による収入減です。収入減の原因は、勤務先の変更、あるいは勤務先は同じであるが勤務先の業績の悪化など様々です。
これはご本人の責任ではなく最近の厳しい経済情勢を反映しています。再生手続による返済は、通常長期(通常は3年から5年)です。従って、こうした将来の収入減の可能性を考えますと、多額の借金を負ったときに再生手続をとるのが適当かはよく検討する必要があるかもしれません。再生手続によって毎月返済をしていくよりも、むしろ思いきって返済しないですむ破産手続をとり、家計と生活の立て直しを計る方が賢明かもしれないからです。
ご相談者の中に、破産手続をどうしても避けたいと言う方がしばしば見うけられます。破産手続のメリット、デメリットは当然ありますが、感情的にこれを避けたいと言う方が意外と多いのです。
しかし、これは考えものです。
破産手続のメリット(返済をしなくてもよいこと)と、デメリット(破産すると特定の仕事につけないこと等)をよく比較すべきでしょう。個人的には特定の仕事でなければ、破産のデメリットはほとんどなく、しいて言えば2度目の破産をする際支障がでる(破産、免責後原則として7年以内は再度の免責はできません)ことだけと考えています。
従って、再生手続の失敗の原因の中には、そもそも無理に再生手続を選んだこともありそうです。

第2に、夫婦の離婚など家庭生活の破綻が原因のこともあります。
長期の返済をしていくことは誰にとっても大変なことです。返済が、よく長距離マラソンに例えられるのはそのためです。ですから一人で返済を続けるのは難しく、何らかの家族の協力、サポートが欠かせません。この家族の協力が得られなくなると返済を続けることは困難になります。そもそも借金を負った方は、多くの場合再生手続を申し立てるまでの間に夫婦間に亀裂が生じています。ことに借金の原因が夫のギャンブル等の遊興費のときは、なおさらです。夫の借金の返済に奥さんが協力してくれるかは、その後の返済に大いに影響します。
ですから、夫が返済中に再度借金をしたり、またそこまでしなくとも夫婦関係の修復に失敗して奥さんの協力を得られず奥さんとの別居、離婚という事態になると、返済はたちまち困難になります。
返済額は苦しい家計の中から何とか捻出する金額であるのが普通でしょう。夫婦が別居をして二つの世帯を維持しながら、返済することは到底無理なのです。 ことに自宅不動産を確保するために「住宅資金貸付債権に関する特則」を使って、再生手続をした場合、事態はより深刻です。夫婦で協力してやりくりをして自宅を手放さないように頑張れれば、すばらしいことです。その場合自宅は、夫婦の絆の象徴になります。しかし、それに失敗すると自宅は二人のいわば「重し」にしかなりません。誤解を恐れずに言えば、再生手続をして借金を返済中の夫婦は離婚する「余裕」がないのです。

第3に借金の原因が何であり、それが取り除けたかということです。
借金を多く負っていても、その原因が一時的なものなら、将来同じ問題で借金を負うことは少ないでしょう。例えば、他人の保証人になってしまったために、借金を負ってしまった場合など、今後は借金を負う可能性は少ないかと思われます。
しかし、収入がそもそも少なくて生活費に当てるために借金の返済を繰り返してきたと言う場合、収入が増加しない限り借金を繰り返す可能性は常にありえます。この場合、前の借金について再生手続を利用して減額しても、生活費の不足は解決していないので、再度借金をする可能性は高いのです。 勿論収入を増加するというのは、簡単なことではありません。奥さんがパートに勤められるならそうしたことも検討すべきでしょう。またそれが無理なら支出をさらに減らすか、無駄使いがないか再度点検することが必要です。
先ほど述べた住宅ローンの特約条項を利用して自宅を確保しようとする場合はとくに注意が必要です。住宅ローンの支払いが苦しいので他のカードローンが増えた場合が多いからです。再生手続後も住宅ローンの返済は、通常再生手続によっても以前と同じ返済条件で返済していくことが多いのです。従って住宅ローンの返済が苦しいと言う状況は変わっていないのですから、カードローンなど他の借金をする危険は依然としてあるのです。
ですから借金を負ってしまった方は、どのような手続を選ぶかを決める際に、借金の原因が何であるのかよく振り返って考えることがまず重要です。
他人の保証人になった、ギャンブルなどの遊びに使ったといった場合、今後これらをしないよう注意すれば借金はしないですむでしょう。しかし生活が苦しい、あるいは住宅ローンの支払いが大変で借金をした場合、借金の根が深いわけですから、より慎重な検討が必要です。
このように民事再生手続の失敗は、収入の減少など本人の予想を越えることもありますが、それだけではなく再生手続を選ぶことが問題であった場合もあることが分かります。
多額の借金を負った場合、どの手続が最も適当かは専門の弁護士の助言が重要になってきます。
そのうえで本人にあった適切な手続選択をしないと、結局無駄な努力を長年にわたりすることにもなりかねません。
そのためにも弁護士会の専門相談をお勧めします。


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